「鬼龍院花子の生涯」や「天璋院篤姫」などの小説で知られる宮尾登美子さんが、作家としての地位を確立する以前に執筆した、宮尾さんの原点とも言える未発表の短編小説が見つかりました。

作家の宮尾さんは「鬼龍院花子の生涯」や「天璋院篤姫」など、たくましく生きる女性を描いた小説の数々で知られ、多くの作品が映画やテレビドラマになるなど人気を博しましたが、2014年に88歳で亡くなりました。
今回、見つかったのは「貧乏感懐」という原稿用紙70枚ほどの未発表の短編小説です。
遺族が遺品を整理する中で見つけた原稿を、宮尾さんと親交が深かった文藝春秋の元編集者に預け、ことしが宮尾さんの生誕100年となるのに合わせ、公表することになったということです。

作品は宮尾登美子として活動する前に使用していた、前田とみ子の名義で書かれ、ぜいたく癖がなおらない40代の妻と、あきれながらも寄り添う夫の2人の暮らしを、丁寧な心情の表現を織り交ぜて描いています。
経済的に苦しかったころの宮尾さんとその暮らしが題材となっていて、自身の生い立ちを描き、作家としての地位を確立した「櫂」につながる貴重な資料だということです。

原稿を預かった元編集者の関根徹さんは「作家の原点となった『櫂』の下敷きになる作品を書いていたことは大変な驚きでした。その点で宮尾さんの『原点の原点』とも言える作品ではないか」と話していました。
「貧乏感懐」は20日発売の「オール讀物」に掲載されます。